米野木台どうぶつ病院

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そもそもフィラリア予防開始前に、血液検査しないといけないの?

当院周辺地域について、フィラリアの予防薬の投薬は基本的には、5月〜12月まで毎月1回の投薬が必要です。

その予防の開始前には、かならず血液検査を行い、感染していないか?予防がきちんとうまく出来ているかどうかを確認しなくてはいけません。しかし、最近ではインターネットでフィラリア予防薬を購入することもできるようで、残念ながら検査をせずに投薬を開始している場合もあるようです。しかし、その場合、万が一感染していると重大な副作用が起こる場合があります。

 

フィラリア検査って何をするの?

フィラリア検査では、わんちゃんから採血をして、フィラリアの感染の有無を調べます。

 

フィラリア検査の方法は?

当院では、血液中のミクロフィラリアの有無を調べる直接法での検査と、血液中のフィラリアの成分(抗原)がないかを調べる抗原検査を行います。

 

●直接法

直接法は、昔からある検査で、わんちゃんから採血した血液を1滴スライドグラスに滴下して顕微鏡にて、ミクロフィラリア有無を確認します。検査キットも必要なく、それだけであれば安価に検査ができます。ただし、フィラリアに感染していてもミクロフィラリア検査で検出できないことが少なくなく、それを「オカルト感染」と呼ぶのですが、これだけで判断することは感染を見逃してしまう可能性があるため不十分です。

●抗原検査

フィラリアの成分(抗原)については、採血した1滴の血液を専用の検査キットにたらすことで、感染の有無がわかります。下記の図のようにフィラリアの抗原が存在すると赤い線が2本出て感染がわかるというものです。

 

なぜ検査をしないと行けないの?

万が一、フィラリアに感染犬に予防薬を飲ませたときに一番怖いのが、アレルギーによるショック症状です。フィラリア予防薬はフィラリアの感染幼虫を殺す薬ですが、血液中のミクロフィラリアも一緒に殺してしまいます。ミクロフィラリアは血液1滴の中に数匹存在するので、犬の体内には数十〜数百万匹以上生息している場合があります。その状態で予防薬を飲むことで、多くのミクロフィラリアが死んでしまうと、そのミクロフィラリアに含まれる成分が一気に血液中に放出されます。その成分が体に反応すると、アレルギー反応によるショック状態を起こすことがあります。最悪の場合命にかかわる場合もある非常に危険な副作用です。

その他にも元気や食欲低下、嘔吐、下痢、皮膚のかゆみや顔の腫れなどの副作用が出ることもおおく、フィラリア感染犬にはフィラリア予防薬が毒になってしまうことがあるのです。

まれなことではあるかもしれませんが、万が一の場合は、取り返しの付かないことになりかねないので、予防前の検査は、とても必要です。

 

フィラリア予防をしっかりやっていれば大丈夫?

予防薬の効果は100%ではありません。さまざまな理由で「有効性の欠如」(lack of efficacy, LOE)が生じます。フィラリア予防薬におけるLOEの主な原因は以下のようなものがあります。

 

●投薬忘れ

フィラリア予防について、一番多い失敗は、この飲ませ忘れです。しかしこの飲ませ忘れについていうと、1ヶ月分飲ませるのを忘れていて投与間隔が2ヶ月になってしまっただけで、運が悪いとフィラリア成虫が感染してしまっている可能性があります。また、12月に最後の投薬が必要になりますが、そこで飲ませるのを忘れてしまったり、また、飼主様の判断で投薬を止めてしまうと、まだフィラリアに感染する可能性がある11月上旬に犬の体内に入ってきてしまったフィラリアの幼虫はそのまま成虫になってしまいます。

 

●気づかないときに吐き出してしまっている

犬は吐きやすい動物ですので、飼主さんのしらないところでもしかすると吐いているかもしれません。予防薬を投与してから数時間以内に吐いてしまうと、薬の成分の吸収が不十分となってしまう可能性があります。しっかり投薬していても予防薬の効果が得られず、感染してしまう可能性もあります。

 

 

フィラリア検査をしないと予防薬を処方できません

さらに検査をする理由には、私達獣医師が、薬を処方する際の大切なルールがあります。

薬には必ず添付文書がついています。添付文書とは、薬の効能や使い方、使う際の注意事項や保存方法など、製薬会社さんによる指示が書いた紙です。フィラリア予防薬にもこのような添付文書があります。実際に当院で使用している予防薬の一部ですがその添付文書のアンダーラインの部位を読むと、フィラリア薬投与前に検査をするように指示があります。薬を使う場合には、添付文書の指示を守らないといけません。検査しないで処方することはできないのです。検査をしないで飲ませて何か異常があった場合には、処方した獣医師の責任です。最近ではインターネットでもフィラリア予防薬を購入することができるようですが、検査なしに投薬することの危険性は、すでにお話した通りですが、このように入手した薬で体調を崩してしまっても責任はすべて飼主さんが追うことになってしまいます。

 

フィラリア検査に、ご理解を頂きますようお願いいたします

動物病院で行う検査には、必ず理由があります。検査はお金がかかるからやりたくない。採血は可愛そうだから受けさせたくない。もちろんその気持ちは、とてもよくわかります。フィラリア検査に関しては、しっかり薬を飲んでいれば正直感染することはまずないと言えますが、万が一感染していると、重大な副作用がおこることもありえますので、とても大切で必要な検査と言えます。

ご不明点についてはお気軽にお問い合わせ下さい。みなさまにご納得いただけるよう努力し、病気の予防啓蒙に努めてまいります。