猫のフィラリア症について
猫のフィラリア症は、フィラリアと呼ばれる寄生虫(Dirofilaria immitis)が引き起こす病気です。フィラリア症と聞くと、犬に多い病気というイメージを持つ方が多いかもしれませんが、猫にも発症する可能性があり、その症状は犬とは異なる特徴を持つことがあります。
フィラリア症の原因と感染経路
フィラリア症は、主に蚊を媒介として感染します。蚊が感染した動物の血液を吸う際にフィラリア幼虫(ミクロフィラリア)を取り込み、その後、別の動物を刺すことで幼虫が体内に侵入します。猫の場合、犬ほどフィラリアの寄生率は高くありませんが、一度感染すると重篤な症状を引き起こすことがあります。
猫のフィラリア症の特徴
猫におけるフィラリア症は、犬と比べて以下のような特徴があります:
1. 寄生虫の数が少ない
猫の体内に寄生するフィラリアの数は一般的に1匹から数匹程度で、犬に比べて少ない傾向があります。しかし、それでも症状が重篤になる場合があります。
2. 心血管系以外への影響
フィラリアは主に心臓や肺動脈に寄生しますが、猫の場合は肺や気道に強い炎症を引き起こすことが多く、呼吸器系の症状が目立ちます。
3. 急性症状の発現
猫では突然死や急性の呼吸困難など、予兆なく重篤な症状が現れることがあります。これが犬との大きな違いです。
10頭に1頭がフィラリアの幼虫に感染している報告*があります。
*出典:佐伯英治:Clinic Note No.55:34,2010
感染したねこの約4割が室内飼育*でした。
蚊は室内でも簡単に入ってきてしまいます。
室内で飼っているからと言って、フィラリアに感染しないとは言い切れないのです。
主な症状
猫のフィラリア症では、以下のような症状が見られることがあります:
– 咳や喘鳴(ぜんめい)
– 呼吸困難
– 嘔吐
– 食欲不振
– 体重減少
– 脱力感や元気消失
これらの症状は他の病気とも共通するため、診断には注意が必要です。
診断と治療
フィラリア症の診断には、血液検査やX線検査、超音波検査などが用いられます。ただし、猫ではフィラリア成虫が少ないため、検査で陽性と判定されない場合もあります。
治療法については、犬とは異なり、猫用の特効薬が存在しないため、対症療法が中心となります。具体的には、炎症を抑えるための薬や呼吸を楽にする薬を使用します。また、重篤な場合には外科手術で成虫を取り除くことも検討されることがあります。
予防の重要性
猫のフィラリア症は予防が非常に重要です。蚊が媒介するため、蚊が活発になる季節(春から秋)には特に注意が必要です。現在では猫用の予防薬も市販されており、定期的に投与することで感染リスクを大幅に下げることができます。予防薬にはスポットオンタイプなどがありますので、適切なものを選びましょう。
まとめ
猫のフィラリア症は発生頻度こそ低いものの、一度感染すると命に関わる危険な病気です。特に急性症状が現れるケースもあるため、早期発見と予防が非常に重要です。日頃から猫の健康状態を観察し、異変を感じたらすぐに獣医師に相談するよう心掛けましょう。また、蚊対策や予防薬の使用を徹底することで、大切な愛猫をフィラリア症から守ることができます。
猫との生活をより安心で健康的なものにするためにも、この病気について正しい知識を持ち、適切な対策を講じていきましょう。